財団小山台の台湾派遣の事前研修を検討する上で、紹介してもらった「新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論」を読み終えました。
著者の小林よしのりさんは あの お下劣ギャグ漫画の最高峰「おぼっちゃまくん」(私が小学生の頃には何かと話題になっていました。)の作者ということもあり、期待値が低く 紹介してもらった後も積読状態でした。一昨日、ついに読み始めたところ、漫画というビジュアルに訴える分かりやすさと、緻密な取材にもとづく筋の通った主張に、数時間で読み切りました。(漫画とは言っても、文字の量が多いです。)
現代台湾の礎を築いたリーダー(政治家の李登輝・陳水扁、実業家の許文龍ら)への取材の様子・取材で聞いた内容を中心にした漫画です。李登輝・陳水扁・許文龍はみな現地でも親日派と言われる方々ですので、本書の内容も親日に偏っていると言えるかもしれません。実際、2000年の発売当初、台湾では発売禁止になるほどでした。また、台湾政府は小林氏の台湾入境(入国)を禁止しています。
だからといって本書の価値が下がるわけではありません。他の漫画ではあり得ない取材の量。その証拠に巻末に下手な新書よりも多い参考文献が掲載されています。

新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論 参考文献の一覧
日本統治時代から台湾人である本省人の李登輝が、戦後に統治者となった外省人(蒋介石)が率いる国民党でどのようにして、総統にまで上り詰めたのか? あっ、李登輝って元は政治家ではなくて農業学者だったんだ。蒋経国が抜擢したんだ。民主化の世論の波・・・。
蒋経国亡き後、副総統だった李登輝が国民党内での予想に反して、民主化を推し進めた強力なリーダーシップ。
民主化を実現するために、初めての選挙には自らはあえて立候補せず。そのために李登輝の国民党から陳水扁の民進党に初めて政権が移ったこと。筋の通った民主化にかける信念。
そんな改革のリーダーたちを産み出したのは日本統治時代の日本だった。
だから日本人はもっと誇りを持つべきだ。
このような主張がされています。
※ 日本の統治時代では、教科書に載る有名政治家だけではなく、 烏山頭ダムの八田與一や 映画KANO~1931 海の向こうの甲子園~ の近藤兵太郎がいます。
「新・ゴーマニズム宣言SPECIAL 台湾論」特徴。
ビジュアルに訴えてくる

文字だけではイメージしづらい表情や雰囲気が漫画の絵を通じて伝わってきます。李登輝が小林氏との会談の場面で中国との関係について慎重に言葉を選んでいる李登輝の姿は、文字で説明される以上に多くを想像させます。
説明のための文章
他の漫画と比べるとですが、セリフではない説明文が多いです。だから、おすすめ。取材内容が盛り込まれた説明文があるから小林氏の主張がが伝わってきます。上の図は228事件の場面ですが、全容がほぼ1ページでまとまっています。セリフはわずか2つだけです。
政治・歴史だけじゃない台湾の魅力

がちがちの政治論でも格調高い学術論文ではありません。鼎泰豊の小籠包のことや中国茶の文化の話など、台湾取材の間に見聞き・体験したことをアシスタントの方?がまとめています。
今日のまとめ
朝鮮半島と台湾と同じように日本が植民地支配をしたにもかかわらず、一方の国では反日感情が強く、もう一方の国では親日感情が強い。
なぜ台湾は親日となったのか?学校で習う歴史と台湾人から見聞きする歴史では、私たちの国”日本”に対する意識が変わってくる。比較することは大切なんです。
決して親日国台湾がすべての人が親日ではないが、少なくとも多くの人が日本統治時代を評価している事実を知ることが、日本人が日本に誇りを持ち・タフな交渉を乗り越え、世界で、特にアジアで仕事をするために必要なことだと思います。