新しい国際交流の形を考えるために、ある中学高等学校で行われた異文化理解を目的とした海外からの留学生との交流を柱としたワークショップ:Global Village for Students の公開体験授業を見学してきました。
一つのテーブルに5~8名の日本人学生がグループになって座り、各グループには留学生リーダー1名ついて進行やプレゼンテーション・話し合いのサポートを行う形でした。また全体の進行も留学生ファシリテーターが行っていました。
プログラム内容
1.自己紹介、他己紹介
まず、グループメンバー(参加者)と留学生リーダーが互いに自己紹介をします。そして次に他のグループと一緒になり留学生リーダーはグループメンバーのことを、グループメンバーは留学生リーダーのことを紹介します。
「他のグループに紹介する」ための自己紹介とすることで、情報を得るために話す/聞くという姿勢が必要になっていました。
2.留学生からのプレゼンテーション:「日本の不思議だと思う日本の事象」
留学生リーダーがグループごとに不思議だと思う日本の事象(カルチャーショック)について写真やスライドを使って説明します。15分程度の発表後、留学生リーダーは別のグループを動き、各グループは別のリーダーの話を聞きます。グループメンバーは、話を聞いて印象に残った部分とその理由を書き出し話し合いをおこないます。
英語でのヒアリングと同時に、外国人の目から見た日本を知ることで日本の特徴や文化の差異を理解するきっかけになっているようでした。特に、各留学生リーダーが写真などを示しながら視覚に訴えるプレゼンテーションをしているので、英語力に不安があっても内容を理解することができているようでした。
3.昼食
留学生リーダーと一緒に昼食をとります。この日は、お弁当でした。
食事を一緒にすることで、構成されたプログラムとは異なった雰囲気があり、距離感が近まるきっかけになっているようでした。
4.留学生の母国語講座
「おなかがすいた」や「ありがとう」など留学生リーダーの母国語で書かれた文字を見て単語の意味を当てるクイズや、リーダーが持参した民族衣装やキルト布を身に着けたり手に取って触ったりします。
留学生リーダーの母国語や母国の文化を教えてもらうことで、相手の国の文化をより近くに感じることができているようでした。1人の留学生リーダーから話を聞くことができる時間は、15分~20分ぐらいしかないので、文化を理解するまでにはなりませんが、留学生リーダー2人から話を聞くことができていたので、「日本と外国」ではなく「日本と○○国と××国」と文化の比較をすることができるようになっていました。
5.留学生リーダーによるプレゼンテーション&インタビュー:「なぜ日本で学びその経験をどう生かすのか?」
留学生リーダーが日本での生活や日本で学ぶ理由についてスライドを使った説明をして、日本人メンバーは発表の内容や心に残った言葉をワークシートにメモを取ります。その後、留学生リーダーに対してする発表の内容に関連するインタビューを行います。インタビューをする前に質問を考える時間が与えられます。
英語コミュニケーションが得意な生徒たちは、要素だけをメモして質問ができますが、英語コミュニケーションの不得意/苦手な学生がキャッチボールをするのは難しいので、”質問を考える”というワンクッションがあることで自信につなげることができそうでした。
また、留学生リーダー個人のストーリーを聞くことで、留学生・外国人を自分とは違う存在ではなく身近な存在になり、異文化に対する壁(抵抗感)を低くすることができているようでした。
6.インタビュー活動
留学生リーダーについて知りたいことをワークシートに5つ書き出し、既にワークシートある母国語・大学・好きな日本食・おすすめの母国の食事・英語を学んだ方法と共にインタビューをする。留学生リーダーが順番に2グループを回り質問を受ける。
一度、質問内容をワークシートに書いてから質問をすることで、質問が通じた喜びを感じることができる。
7.グループワーク:「理想の未来をみんなで描く」
理想の未来とは何か?をグループ全員で1枚の模造紙に描き、その内容について英語で発表を行う。グループワークの途中で、リーダーから自身がどんな貢献ができるのか、自分の得意なことや好きなことは何か、様々な問いかけや語りかけがありながらまとめていく。
今まであまり英語で話すことができずに学生も描く作業では、積極的に参加していた。
8.発表
英語での発表を通じて、グループワークの成果を発表した。英語の得意でない人たちは、事前に英作文をしてから発表に臨むこともできる。グループ全員が発表に関わることで、少しでも人前で英語を使う訓練になる。
9.振り返りシートの記入
アンケート形式の振り返りシートに記入をしながら、今日一日の自身の行動を振り返り、何を学んだのか、どのような意味があったのかを再度考える。
感想
他のプログラムを見ることで初めて自分たちのプログラムで大切にしていることが言語化できるようになってきました。外国人から日本で驚いたことを英語で聞いたり自国の説明を写真で見せてもらったりすることで異文化を頭で理解することは出来ます。しかし自分が求めているのは頭で理解することではなく、グローバル環境で揉まれてもがき苦しむ体験をすることで人間的な成長ができることです。
短時間で実りある時間にするためには、場を仕切るファシリテーターはもちろん、グループに付く外国人の力量が高いことが重要で、GVSプログラムは留学生をトレーニングをしてグループにつけている分、他の交流プログラムよりアドバンテージがありました。
異文化理解がしたいのか異文化体験がしたいのか考えるきっかけとしていい時間でした。